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「物語―青春の煌めき」―25―≪卒業してからの進路≫

恵子は美知子を妹と寝起きして勉強している部屋に入れた。
8畳の畳間で壁際の真ん中に机と椅子を2つ並べていた。
机の上は学校で使う教科書を並べていた。
引き出しが手前に大きいのと横に3つついているどこにでもある机と椅子だった。
机の両側にミカン箱3つを縦に並べて本箱にしていた。
部屋の両端の片隅に寝起きするフトンをたたんでいた。
妹側に着物のいこいが置かれていてそこに服をかけたりしていた。
1963年2月の土曜日の午後、昼下がりのことである。
妹は本を借りた人に返すと言って同級生の家に出かけた。
美知子は紺の半コートを脱ぐと茶色の地に黄色の線が腕に2本入ったセーターを着ていた。下は紺のズボンを履いて茶色のソックスを履いていた。
恵子はよそいきでもない。普段着、これで外に買物にも行く。
紺色のセーターに黒のズボンを履いて紺色のソックスを履いていた。
恵子は美知子に茶色の地にグレイの小花を散らした座布団を出した。
美知子は
「突然お邪魔してごめん。今日は土曜で大学に通う兄貴も学校が休みで兄貴の彼女が笠置町役場に勤めていて半ドンだから家に遊びに来ている。兄貴と竹子さんがいる家に一緒にいたくないので貸し本屋に行ったけどまだ竹子さん、家にいて帰っていないと思うので美山さんの家に寄ったのです」と話す。
恵子は
「この間、奈良に行くときに見た人、1級上で学校でもよく見た人ですね」
「そう」
「卒業して笠置町の役場で働いているのですか」
「もう2人の話しを聞いているとたまらない」
「兄貴が大学卒業したらすぐ結婚する話になっていたのに、なんか兄貴が2年の終わりに結婚すると兄貴が言い出している。そうなると兄貴は学生結婚や。竹子さんの20歳になるのを待って結婚すると言い出している。私、竹子さんと一緒に暮らすってそんなたえられない。そうなったら私が家を出るしかないと思っている。それが親が女の子は嫁に行くまで親の家にいるのが結婚するまでの娘の常識と言って反対している」
「お兄さんが結婚して竹子さんが一緒に住むことはそれは家族になることだからいいことだと思う」
「学校でさんざん仲のいいところ見せ付けられて。兄貴と竹子さんは同級生で兄貴から竹子さんにラブレターを出して交際申し込んで付き合っている。竹子さんは美人かもしれない。けれど私は学校で2人がべったりしているところを何度も見ているのでもううんざりしている。高校1年の終わりから付き合ってまだ続いているのも異常なのに初恋同士が結婚することも私には理解できない。兄貴はもっといろんな人と付き合えばいいのに竹子さん一筋できて私から見たら兄貴は世間知らずでアホやと思っている」
「長いことを付き合って初恋で実る恋は素晴らしい。私は憧れる。初恋で結ばれて結婚できればそれは女性として幸せなこと。竹子さん、お兄さんに愛されて結婚するということはいいことだわ」
「何でなの。初恋で結婚することで女性は幸せかもしれないけれど兄貴の立場から見ると兄貴がこれから竹子さんにずっとお尻に引かれて行くのがわかる。兄貴は優しい気性だけど竹子さんはしっかりしている。芯がしっかりしているので私と竹子さんとはあんまり合わないと思っている」
「美知子もはっきり物事を言うほうだし竹子さんはしっかりしているようだし、それでも美知子が年下で兄嫁になるので妹と思って甘えたらいいのと違う」
「そんな甘えられるような人と違う。兄貴には優しい言葉をかけているが私にはたまにきついことを言う。それに兄貴に私のことを告げ口している。これも気にいらん。この間、駅の近くにある回転焼屋の店の前で妙子と一緒に回転焼を買って食べていたら、半ドンで仕事を終えてすぐに列車に乗ってきたのか木津駅で降りて兄貴のところに行く竹子さんにばったりあってしまって。そしたら夜、兄貴が言う。『学校の帰りに買い食いするな。女の子はそんなことしたらみっともない』と。これで竹子さんが兄貴に告げ口したのがわかってまた嫌いになった。それに嫌いなところもう1つある。
この間、奈良に行くときに恵子も見たでしよ。たまたま木津から電車に乗ったら同じ車輌に兄貴と竹子さんが電車にのっていた。兄貴は役場の勤務、半ドンで終るのを笠置駅で待って一緒に電車に乗ってきて私が知らずに電車に乗ったら兄貴と竹子さんが一緒に乗っていた。兄貴はもうわざと私の見ている前で竹子さんの手を取って時計を触って竹子さんの手首を触っている」
「それで美知子は嫌な顔して私の顔ばかり見ていたわけね」
「なんで電車の中で私の見ている前で兄貴はわざと竹子さんの手を取って腕時計と手首を触っているのか。妹の私がいるのに竹子さんは遠慮してつかまれた手を離せばいいのに満員電車のいいことにつかまれたままにしている。
もうこんな光景見ていて兄貴と兄貴の嫁さんと一緒の屋根の下で暮らすことがたえられない。高校卒業したら家を出たいのに親は1人暮らしを反対している。それこそ兄貴が出ていて別に家庭を持ったらと私は言っているのに親は長男だから一緒に暮らすのが当たり前と言っている。私はどうしたらいいの」
「そんなに急いで家を出ることはないしゆっくり考えていけばいいのと違う。今日は何の本を借りてきたの」
「近代映画の新しいのが入っていて近代映画を借りてきたけどプレスリーの男前の写真がいっぱい載っている。見ているだけでうっとりする」と言って美知子は近代映画の雑誌を出してぺらぺらとページを何ページかくるとエリビス・プレスリーの顔写真がでていた。オールバックにしたプレスリー、なるほど美知子がいうように男前である。
美知子は顔写真のグラビアを見ながらプレスリーの歌、「優しく愛して」を歌いだした。美知子は
「こんな人が私の目の前に現れたらすぐに恋をするけれど私の器量ではあかん」という美知子、恵子もそうだったが美人でもなく器量が悪いということもなくどこにでもいる平凡な顔をしていた。
美知子は「もう少しここにいさせてね」と言って近代映画の雑誌を見ていた。

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