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「物語―青春の煌めき」―35―≪卒業後―その1≫

ギターを弾いている真部信さん。「禁じられた遊び」の演奏が終わった。
赤色のワンピースを着た奈津子が舞台の端に立った。
奈津子は話す。
「これから皆さんで一緒に合唱しましょう。まず私からのリクエストでロシア民謡のカチューシャとNHKで歌われた山小舎の灯を一緒に歌いましょう。
その間に大きい厚紙のカードが各テーブルに回していきます。ここに一緒に歌いたい歌の題名を書いてください。書いている順番に一緒に歌っていきましょう」
そして奈津子は歌いだした。
「りんごの花ほころび----」
続いて会場にいる人たちが次々と歌いだす。
1番前に座っていた恵子たちのテーブルに大学ノートの使い古しの裏が1枚、鉛筆と一緒に回ってきた。
俊道は鉛筆と厚紙のカードを持って
「何を歌いますか」
と、聞くと
舞子は
「最初は雪山賛歌そしてドドンパ娘、これ舞台で皆が一緒に踊れるから」
美知子は
「悲しき16歳、誰か歌って。哲也さん、上手いから歌ってね」
という。
どちらも舞台で踊れるリズムに俊道は
「ほほう---。すごい。田舎者の時代の先端か」
「私はVACATION」
と、言ったのは由加だった。
「今日は久しぶりに私も達男さんも休みで東京から信君も来てくれて皆に会えてうれしい休みだから」
舞子は
「そうね。そういえば今日は、店、何ヶ月ぶりに休みで店を閉店にしたのだからね」
「そう。ずっと休みがなくて」
俊道は
「もうこれで次のテーブルにまわすから」
と、言って隣のテーブルに鉛筆と厚紙を持っていった。
その間、相変わらず美知子は悟の顔をずっと見ていた。
悟が美知子から見られているのを気がついているようだ。
悟はコーヒーを飲みながら話し出した。
「これからの時代は優しくても自分の意見の言えない女性は世間から取り残されていく世の中になっていく。来年は東京オリンピックの開催で世界各国から選手たちも観光客もやってくる。個々に意見を言える外国の人たちがやってくる。日本文化は女性が家にいて男性が外にでて働くということが定番になっているがこれからは違う。男女が社会に出て働いていく時代がやってくる」
俊道も
「女性は話さないことが日本文化の美意識になっているが話さないと人の心は分からない。話して意見を言ってこそお互いの心の中が見えてくる。話さないで顔の表情を見て腹の探りあいをする時代はもう遠くになっていく。
今田奈津子のように積極的に行動する女性たちがこれから増えてくるだろう」
悟も
「そうそう。これからは自分で物事を企画して掘り起こしていく女性が出てきて日本の常識を変えていく」と、話すと美知子は
「どんな風に常識を変えていくの。そう簡単に変えられるとは思わない。戦前に生まれた親で私たちの世代が育っている。昔のしきたりが町に残っていてしきたりと町と一緒に暮らしているのに」
悟は
「それもいつかは崩れていく。アメリカ映画を見て育った僕らの世代、いずれアメリカ的な生活に変化していく。アメリカ的な生活は国土の狭い日本、高層アパートが建ち地域で行っていた町の行事もなくなっていく。地域の行事は1つ1つなくなっていく。これがいいとは言わないが古い地域社会のしがらみから解放されたい」
美知子は
「それはあかんわ。そんなことしたら町という枠がなくなっていく」
舞子は
「美知子は古いな。これから町という枠がとれると個々の生活が重点になって暮らしやすい町になっていくと思っている」
「それは個人主義の始まりというのや。それで野村さんに聞くけれど女性が社会に進出するほうがいいのですか」
悟は
「今までは男性本位の社会で女性は心の中を出すことができなかった。女性が声を出していれば無駄な戦争をすることがなかったと思っている。男性本位の社会はやがて軍国国家になった。もしここで女性が発言する権利があれば必ず女性は戦争を反対している。子どもを戦場に出したくないのが母心です。しかし男性中心の社会に女性の意見が言えない社会の仕組みに女性は黙った。黙ったから戦争はエスカレートして広島や長崎に原爆が落とされるまで日本の男性たちは戦争の無駄を知ることができなかったのです。やはり地域社会の結束はいいこともあるが長いものに巻かれていく鉄則が地域に根付いていて女性は何も声を出すことができない」
美知子はまた聞いた。
「そしたら聞くけれど赤いワンピースを着た今田奈津子さんの生き方派ですか。私みたいに親の言うことを聞いて洋裁学校に通う将来の花嫁修業型ですか」
「僕はこれからの時代を考えると今田奈津子の生き方に賛成している。しかし結婚して子育てするなら脇本さんのほうがいいかもしれない。しかしこれは言っておきます。これからの時代は女性も個々の感性が認められる時代です。東京からきた岡本由加さんのような人がこれから増えていくでしょう。戦争未亡人になった女性たちはすでに働きだしています。特技のあるものは特技を生かしていく。特技のないものは町工場で働かないといけない。日本の文化はどんどん廃れていく。日本文化の行儀作法を持った人が教室を持って教えていく時代になっていく。家庭のしつけもよほどしっかりしないと男たちは外にでて働きだしている」
美知子は
「野村さんは感性といったけれど感性とは何ですか」
「つまり直感に長けた人、これからの時代に向かって何が到来するのか。それを見極めて自分のものにしていく。それには本をたくさん読んでいい美術をみていい音楽を聴いて自己の感性を磨いていかないといけない。どうして脇本さんは今田奈津子さんにこだわるのですか」
「別にこだわってないけれど今田さんに強烈な印象を受けました。こんな奈良の町に今までに見なかった時代の女性が出てきて驚いている」
と、美知子は話して下を向いてしまった。
会場はいつのまにか舞台に数人がでて踊っている。
ドドンパ娘に舞子は舞台にでてツイストを踊った。
赤と白の水玉模様のワンピースが舞台で映えている。
舞子は今日のプログラムを知っていて踊って映える服を着てきたのかと恵子はじっと舞台を見ていた。
悟や美知子の話を聞いていてこれから恵子の知らない、見たことのない時代がやってくるのかもしれない。不安もあるが女性が社会にでる時代は創造もつかないが何かが変わっていくことを実感していた。

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履歴書の添え状

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
by 履歴書の添え状 (2010-09-15 23:54) 

鄭容順のコーナー

コメントありがとうございます。
本当に嘘八百の物語です。
66年生きた人生で私がしたくてもできなかったことを青春の物語にしました。1960年代に高校時代とOL生活を送ったことが今となると私の心の財産になりました。しかしまだまだ女性は男性に従う世間でした。なぜ女性は話してはいけない。意見を言ってはいけない経験を織り交ぜて物語にしています。時間があるときは早く続きを書こうと思いながら毎日、仕事優先ですので遅れることもあってすみません。
これからは短くても追々続きをかいていくようにします。
読んでいただくことで励みになっています。ありがとうございます。
by 鄭容順のコーナー (2010-09-18 08:40) 

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